疲労とうまく付き合うための手立てといったら、思い浮かぶのは何でしょうか。がんばれる体力? 強いメンタル? それとも自分がリラックスできる方法を知っていること? すべて正解ですが、その前に。大切だとわかりながらも、気を抜くと崩れてしまう姿勢、実はリカバリーの基本です。
正しい姿勢とはどんな状態?
立つ、歩く、座る。ヒトは日中、この3つの動作を繰り返して生きていると言っても過言ではありません。これらに共通しているのが、姿勢です。「きちんと立ちなさい」「背中が丸まっているわよ」子どもの頃から言われ続けているにも関わらず、年を重ねてもなお"正しい姿勢"は現代人の課題の一つ。学術的には以下のように言われています[1]。
① 力学的視点・・・・バランスよく安定しているか
② 生理学的視点・・・疲れにくいか
③ 心理学的視点・・・気持ちが安定しているか
④ 作業能率的視点・・動きやすいか
⑤ 美学的視点・・・・見た目が良いか
この中でも、今回注目したいのが①と②。姿勢が崩れると肩や腰が凝り固まり、疲れやすくなるだけでなく、時に痛みを感じるようになります。この「痛み」は、ストレッサー(ストレス要因)のひとつ。瞬間的な痛みは急性ストレッサー、それが長く続くと慢性ストレッサーとなり、心理的にも影響を及ぼすようになります。
また疲労と深い関係のある自律神経は脊髄から体の各所に分布しているため、背中が丸まったり歪んだりすれば、当然影響を及ぼすわけです。
リカバリー物質セロトニンと姿勢の関係
ヒトの姿勢は、重力に逆らって働く「抗重力筋」によって維持されています。顔から下肢に至るまで全身に位置する筋群で、リカバリー物質であるセロトニンは、抗重力筋を活性。セロトニンが減ると抗重力筋に緊張感がなくなって猫背になり、正しい姿勢を保てなくなります。するとコリに繋がり、ひどくなると痛みが発生して心身の疲労に......そんな悪循環が起きてしまうのです。
自分の姿勢に自身はある?4正しい姿勢の作り方をマスター
「姿勢を正してみてください」言われて作ったその姿、本当に"正しい"姿勢だと思いますか? 長時間のデスクワークやスマホを始めとするデジタル利用、女性ならハイヒール歩行で、現代人の姿勢は崩れがちに。あまりにもその状態が長く続いていて、体は "正しい"姿勢を忘れてしまっているかもしれません。
姿見の前に横向きで立ち、まずは自分の姿勢をチェック
✔ 背中が丸くなっている
✔ おなかが緩んでいる
✔ 肩が前に入っている
✔ 体が前傾している
✔ お尻が出ている
✔ 首だけ傾けて下を見たとき、見えているのは甲の前方からつま先
以上の6つのチェック項目、ほとんど当てはまっていたという人が多いのではないでしょうか。まさに、姿勢が悪くなっている証拠です。自律神経を乱す姿勢の崩れは、疲労のはじまり。まずは正しい姿勢の作り方を覚えましょう。
通勤電車、信号待ちなど。姿勢が見違える!4つの動作
ヒトの姿勢は、重力に逆らって働く「抗重力筋」によって維持されています。顔から下肢に至るまで全身に位置する筋群で、リカバリー物質であるセロトニンは、抗重力筋を活性。セロトニンが減ると抗重力筋に緊張感がなくなって猫背になり、正しい姿勢を保てなくなります。するとコリに繋がり、ひどくなると痛みが発生して心身の疲労に......そんな悪循環が起きてしまうのです。
【STEP 1.イン&アップ(お腹)】
何より、おなかが抜けた状態(力が入っていない状態)が姿勢を悪くします。試しに腹筋を緩めて脱力してみてください。背中が丸くなりませんか? おなかを正すには「イン&アップ」です。足を閉じて立ち、腹筋にぐっと力を入れてお腹を引っ込め、そのまま上に引き上げて。すっと背筋が伸びるのを感じられるはずです。自然な呼吸を保ちながら以下の動作を続けてください。
【STEP 2.ロールダウン(肩)】
次に、肩と肩甲骨をリラックス。前から後ろへぐるりと肩を回してストンと落とします。腕が体の側面にきていることを確認してください。お腹はイン&アップのままで。
【STEP 3.ウェイトバランス(重心位置)】
重心位置を整えます。猫背になりがちな現代人は、前重心で立っている人がほとんど。特に女性のハイヒールは、どうしたって重心が前に傾いてしまいます。だから、意識的に重心を少し後ろへ。体を曲げず首だけ傾けて下を見た時に、足の甲がしっかり見えていればOKです。イン&アップ、ロールダウンもキープできていますか?
【STEP 4.タイトヒップ(お尻)】
最後の仕上げです。STEP 1?3の状態を保ったまま、お尻にエクボを作るようにキュッと引き締めます。正しい姿勢を固定するようなイメージです。
さて、改めて鏡で自分の姿をチェックしてみてください。さっきよりも美しい立ち姿になっているのがわかると思います。通勤電車や信号待ちで立っている時、歩いている時、デスクワークで座っている時も。でも、自分は身体が硬いなぁ、上手く動かせないなぁと思うときは、リカバリーウェアを着て自宅で正しい姿勢を試してみましょう、リラックスしている状態だと身体も緩む作用があるはずです。明日からあなたも正しい姿勢、ちょっと意識してみませんか?
(引用)
[1]中村隆一・齋藤宏・長崎浩著(2003).基礎運動学 第6版,医歯薬出版
取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:小山圭介