日本代表フィジカルトレーナー 泉建史先生×ヨガインストラクター 中畠綾香先生対談 Vol.2「泉さんが考えるアスリートの現場でのリカバリー」

スペシャル / 運動タイプ-休養学

フィジカルトレーナー 泉建史先生、ヨガインストラクター 中畠綾香先生とのスペシャル対談を複数回に渡りご紹介いたします。

「泉さんが考えるアスリートの現場でのリカバリー」

・トレーナーを目指したきっかけと、リカバリー(コンディション管理)との出会い
・アスリートでも基本のリカバリーアプローチが大事
・アスリートのリカバリー方法

RLスタッフ:今回は、泉先生にトップアスリートの現場でのリカバリー事情を伺っていこうと思います。まずは、泉先生がトレーナーを目指したきっかけを教えていただけますか。

泉先生:陸上競技をしていて、走るのがとても好きでした。自分の身体と向き合ったり、怪我をしたこともありますが、それがきっかけで、自分の身体と対話したりして、学びと成長を感じ前向きにもなれましたし、運動するということが自分にとっての最初の基礎になったと思っています。その頃から、今のような仕事をしたいと思っていました。

RLスタッフ:現役時代の時から、リカバリーやコンディションについて、実践している選手だったのでしょうか。

泉先生:そうですね。当時はあまり具体的な情報を知らなかったのですが、ストレッチを取り入れたり、トレーニングが終わってから歩いたりするなどで、身体が休まるという感覚はよくありました。少しずつスポーツ科学を学ぶ機会なども増えていきトレーニングや競技を頑張れるという感覚が、自分でもイメージできていました。

RLスタッフ:泉先生の現役の時と比べて、トレーナーの方々の指導方法などは変わりましたか。

泉先生:今のトレーニングの基礎となる情報が、しっかりと日本に入り構築しはじめたのは、1990年代だったと思います。そして、2000年代になってから、国際資格の団体「NSCA」などから海外の最新の情報がより多く学べるようになりナショナルチーム施設ができプロスポーツ化も進みその辺りから大きく変化をしてきたのだと思います。私からしたら、今は何でも調べられるので、とても羨ましい環境ですね。

RLスタッフ:そうすると逆に、情報を取捨選択しなくてはならなくなるのでしょうか。

泉先生:はい、「選択する力」は必要ですね。新しい方法など色々とありますが、結局、意外とシンプルなものを選択したらそれが長く続いたりするケースもあります。なので、基本を大切にしてもらった方が良いと思っています。トレーニングやリカバリーに対する情報は沢山ありますが、自分自身で試して、自分に合い、そして続けられることを見つけてほしいです。

RLスタッフ:以前取材させていただいた、Bリーグの新潟アルビレックスBBのコーチも「方法は教えてあげられるが、その選択は自分自身で選んでもらわないとルーティンにできない」とおっしゃられていて、このことに近いのかなと思いました。

泉先生:結局、暮らしは自分自身の中にあります。暮らしとは朝起きてから寝るまでの間で、一番その人にとってできることをすることが大切です。リカバリーの方法は色々と試してほしいとは思うのですが、それらはすべて生活と共にあるということではないでしょうか。

RLスタッフ:今度は、アスリートのリカバリー方法をお聞きしたいです。試合や練習が終わった後に、部位を冷やしたりなどしているイメージはあるのですが、実際のところは、練習が終わったらどのようなリカバリーをするのですか。

泉先生:まず、ジョギングや散歩をすることは必須項目にしています。身体の疲労物質を取るときには、マッサージや栄養補給などあるのですが、一番いいのは有酸素運動でゆっくりジョギングをするということです。とても軽く、3割くらいで走る感覚で、まずは疲労物資を除去(代謝の副産物)してほしいです。

RLスタッフ:「リカバリーラン」という考え方ですね。

泉先生:はい、その後は自分自身で、身体のチェックをすることが大切です。身体を廻旋させたりするセルフチェックのストレッチをすることで、いつも通りに届くかなど確認して、もう少しリカバリーが必要かな、などの判断をします。またリカバリーの環境が整っている選手には、終わってからプールで歩いたり交代浴(冷やす&温める)時間を取ったりもしています。

RLスタッフ:その他には何かありますか。

泉先生:栄養補充をすることも大事なので、30分~1時間以内に実施するようには促しています。汗もかいて、体重を計ると水分量が減っていることもあるので、イオン(ナトリウムやカリウム)を補い水を含むことも伝えています。そのあたりもとてもシンプルな話です。

RLスタッフ:食事の成分等で大事なものは具体的にありますか。

泉先生:行っている競技によって戦略が変わるのですが、栄養補充という視点ですと、少し糖度のあるものや、タンパク質量のあるものが良いと思います。特に、手軽に摂取できるようなもの、ゼリー系などもあります。また運動量が上がると「鉄欠乏貧血」などもありタンパク質はもちろん、吸収を高めるビタミンC、造血のビタミン類や鉄に関した摂取など実施を促しています。栄養分野の専門家と協力して紹介しています。

RLスタッフ:競技によってリカバリー方法が変わることもあるのですね。

泉先生:そうですね、ジャンプをする動きが多い競技の方は、足の裏がかなり疲れているので、足裏のリカバリーとして、自身でいろんな形のボールを使ってマッサージをしています。軽く足の裏で転がすようなイメージです。それをすることで、足裏の繊細な部分をケアしたり、足の裏がほぐれることでふくらはぎの張りをとって、リラックスさせることも大切です。

また同じ姿勢などが多いスポーツの競技などは、できるだけ多くのパターンのストレッチ動作(立ちながら、座りながら、寝ながら)なども入れ戦略を立てます。

※前回の記事はこちら
https://www.venex-j.co.jp/recovery_lab_magazine/special/detail/20220901-01.html

Profile

◇ヨガインストラクター 中畠 綾香 先生

北海道出身。前職は声優、広告営業マン。多忙な会社員時代にカラダと心のバランスが崩れ鬱を経験。自身の心身の健康の為にヨガを初め2014年ヨガインストラクターとしての活動を開始。これまで某大手ホットヨガスタジオで2期連続トップインストラクターに選出され、全国のスタジオでのレッスンやヨガイベント・TV出演などをつとめる。現在はフリーランスとして活動の場を広げてヨガスタジオに足を運ぶ時間のないオフィスワーカーの方々に、ヨガで一息つき心身を整えてもらいたいという想いから企業ヨガをメインに活動中。

【所有資格】
全米ヨガアライアンス200 / メンタルヘルスケアヨガ / ストレスオフトレーナー / 産後ママのためのメンテナンスヨガ / 高津文美子式フェイシャルヨガ / 肩甲骨ヨガ®︎ / シニアヨガ / マタニティヨガ / チェアーヨガ / セロトニン認定講座修了

◇フィジカルトレーナー 泉 建史先生

国内・海外スポーツ分野で活躍。現在、複数の日本代表チーム(ナショナルチームスタッフ(情報・科学))や世界的な規模のプロスポーツ機関でフィジカル育成強化を担当。国際団体NSCAのジャパンアワード授賞式で日本の最優秀指導者賞を受賞。また長年、国際教育団体で全国のスポーツトレーナーの教育に関わり、行政のスポーツ健康応援プロジェクトでは各世代に向けた「簡単にできる身体チェック」をはじめ「誰でもできる姿勢づくりエクササイズ」を紹介し、幅広い分野で活動中。

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