【アンバサダーインタビュー】陸上競技・100mハードル選手 寺田明日香さん<後編>

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現役アスリート、妻、母、会社代表、社団法人代表理事といくつもの顔を持ち、すべてに全力投球のパワフルな女性といったイメージの寺田明日香さん。23歳で現役引退後、結婚・大学進学・出産といった人生の大きな出来事を経験し、26歳で競技転向する形で現役復帰。その後、29歳で再び陸上競技に復帰し3度も日本新記録を樹立、自身初のオリンピックとなる東京2020オリンピックに出場。日本人としては同種目21年振りの準決勝進出という快挙を成し遂げました。現役トップアスリートとして母として、そして何より1人の女性として輝き続ける寺田さん。そんな寺田さんに、たっぷりお話を伺いました。

休養の種類を理解して休む。いい状態で若い選手と戦うために。

―現在会社を立ち上げられ、選手の育成などにも力を入れられている中で、若い選手にも休養という視点でアドバイスすることはありますか?

休養のとり方って本当にいろいろあると思っていて、身体を休める休養だったり、心を休める休養、頭を休める休養、それぞれ自分の特徴をまず知ってもらって、どれをやったらどこが休まるのかというのを理解してもらうのがいちばん大事かなって思います。身体が休まっても心が休まっていなかったり、その逆ももちろんありますし。それで上手く休養の種類を織り交ぜながら過ごしてもらえるとフレッシュな状態で競技にも打ち込めますし、仕事もできるんじゃないかなって私は思っています。

―後輩アスリートから、そういった休養についての相談事を受けることも多い?

多いですね、ありがたいことに(笑)。でも専門家ではないので、やっぱり私の経験からお話させていただくことが多いんですけど、何か少しでもその方の悩みが解決するきっかけになってくれたらいいなって思っています。

―若い選手たちは休養よりも練習やパフォーマンスアップに気持ちがいってしまいがちだと思いますが、長くやっていくためには休養も重要ですよね。選手生活が長くなっている中で、寺田さんが休養を考えた年齢やきっかけってどれぐらいの時期だったのでしょうか?

やっぱりラグビーを始めてからなので、267歳ぐらいだと思います。若いときは筋肉痛が出ても疲れてても、なんかできちゃう感じがあるんですけど(笑)。だけど、私の場合は1回中断をしていて、なおかつそこに出産を挟んでいて、練習後にすぐ回復しないぞっていうのを顕著に感じたんですよね。今までの過ごし方だと次の日の練習にかなり支障が出るというか、ついていけなかったり筋肉痛がぜんぜん治らなかったり。逆に2日後に出てくるぞ、みたいな感じになって(笑)。もう、いろんなことが初めてすぎて。

徐々に変わっていくならまだよかったんですけど、ドーンと変わったので、そろそろ休養とかリラックス方法についてはきちんと考えなくてはマズいなってすごく思ったので、そこからですね。20代後半でラグビー選手として競技復帰して、これは回復せんぞ! と思って。

―そうすると練習の方法も変わってくるかもしれないですね。

どうしても筋の固さや柔軟性っていうのは若い子に比べるとどんどん劣ってきてしまうので、そこをケアでどれだけ対応できるか、栄養や睡眠で回復できるかっていうところなので。いろいろやり繰りしなきゃいけないところもあるんですけど、でもスタートラインに立つとそれは関係ないので、自分のいい状態で若い選手と戦わないといけないですからね。

パリオリンピックで決勝に残る。娘と一緒に成長できる母親になる。仲間と力を合わせていいものを作る。これが今後の寺田明日香!

―寺田さんはめちゃくちゃポジティブというのがチームあすかのスタッフ全員一致の寺田明日香像ですが、そのポジティブの源はどこから?

なんでしょう、完璧をやめたことでしょうか(笑)。かつてこだわっていた完璧主義をやめたっていうのは、自分ではすごく大きいと思っています。いい意味で適当な部分がすごく増えて、その適当さも許せるようになったし、誰かの適当さも許せるようになった。それはすごく大きいなって思います。

昔、若いときはすべて自分でやりたかったし、人に頼るのも嫌だったし、誰かが失敗してるのを見るのもイライラしちゃうみたいな感じだったんですけど(笑)。今はそうではなくて、いろんな人がいて、いろんな人が集まったときにそれぞれの良さを持ってやった方がよりいいものができるっていう楽しさが分かったので。自分の適当さも人の適当さもオッケーで、逆に良さを引き集められればいいんじゃないかなっていうふうに思っています。

―それは何がきっかけだったんでしょう? お母さんになったこと?

1回陸上をやめたっていうことも大きいですし、子どもができたっていうのも大きいですし、ラグビーをやって自分のできない部分を誰かに助けてもらうっていう経験をしたっていうのも大きいですし。この10数年で経験してきたことがぜんぶ、今につながっているのかなって思います。

―東京2020オリンピックが終わってから、気持ちに何か変化はありましたか?

やっぱり東京オリンピックがすごく自分の中では大きくって、ラグビーを始めたのも東京オリンピックを目指してでしたし、陸上に復帰してから目指していたのも東京オリンピックだったので。それに子どもが欲しいと思ったのも東京オリンピックの開催が決まってからなので、本当に私たち家族のこの10年間っていうのは東京オリンピックというものがあったから、そこにいろんな想いがあって過ごしてきたんだなって思います。

実は、陸上に戻る前から東京オリンピックが終わったら選手としては辞めようかなって思っていたんです。でも、実際に終わってみると、東京オリンピックでできなかったこともあるし、まだまだやりたいなっていう気持ちも出てきて、それに何より、すごく応援してくださる方もたくさんいて。そういう中で競技から離れるのはまだ違うかなって思うようになりましたね。東京オリンピックが終わってからのこの1年間で、もう1回選手としてパワーアップしてオリンピックに出たいなっていう気持ちが少し出てきました。

―最後に、今後の寺田明日香について教えてください。

難しいですね(笑)。選手としては、やっぱりパリオリンピックで決勝に残るってことを目標にしていきたいと思っています。日本の女子選手で短距離種目の決勝に残った選手は前回の東京オリンピック以来、もう50年以上出ていないので、そこはなんとかしてコマを進めたいなって思ってます。

母親として、1人の女性としてっていうところは、娘と一緒に成長できる母親でありたいなって思っています。母親だから何でも娘の道筋を作るんじゃなくて、一緒に考えて進んでいけるような母親でありたいなって思います。

あとは会社も設立して、一緒にやってくれる仲間もいるので、仲間と力を合わせていいものを作っていけるような雰囲気や、マネジメントも学んでいかなければいけないと思っています。みんなが活き活きと、それぞれの良さを活かしながら楽しく働いていけるような環境を作っていければなって思っています。

※前編の記事はこちら
https://www.venex-j.co.jp/recovery_lab_magazine/exercise/detail/20220930-01.html

Profile

◇寺田 明日香 選手

陸上競技・女子100mハードル元日本記録保持者。東京2020オリンピック日本代表。
2009
年 世界陸上日本代表、2013年に引退後出産を経て2016年、7人制ラグビーに競技転向する形で現役復帰、2018年に陸上競技に復帰。翌年に日本新記録を樹立し、世界陸上出場。2021年、1287という記録で日本記録を再び更新。日本選手権では全種目を通じて大会史上最長ブランクとなる11年ぶりの優勝を果たし東京オリンピックに出場。日本人では同種目21年ぶりの準決勝進出を果たした。同年末には株式会社Brighter Hurdler、一般社団法人A-STARTを設立。競技活動の傍ら次代のアスリート育成に関わる事業を展開している。

https://asuka-terada.jp/

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