今回はべネクスがより疲労やリカバリーの研究を行うために、理化学研究所生命機能科学研究センター チームリーダーの渡辺恭良先生にべネクス最高技術アドバイザーに就任いただいたことを記念して、渡辺先生にリカバリーウェアの今後の可能性などをお聞きしました。
Vol.2はこちら→「長距離移動時の疲労のメカニズム」
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◇海外への移動は、睡眠の問題や自律神経系のパワーが落ちる問題がある。
◇時差は、睡眠や心身のすべてのリズムを狂わせ、とくに大きな時差(昼夜逆転など)には、なかなか適応できない。
◇外からの循環器系の調整による自律神経系を調整することが必要になる。
◇優先すべきリカバリー方法は、リカバリーウェア、水分摂取、簡単な体操や歩き(できる範囲で)
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RLスタッフ:海外遠征のアスリートや、海外出張・海外旅行者などの移動時の疲労のメカニズムをお伺いできればと思います。
渡邊先生:睡眠と姿勢の状態につきます。熟睡できない、あるいは、睡眠そのものが短くなり、自律神経系のパワーが落ちることも要因です。姿勢を変えられるフルフラットになるような座席と、そうではない座席ではだいぶ疲れが違いますよね。眠れるということだけではなくて、横たわれるかどうか。長く座っているというのが我々にとっては、身体に負担のかかる作業ですので。もちろん定期的に立って動くことができると良いのですが、移動時にはなかなか難しいですよね。
RLスタッフ:自律神経というキーワードがありましたが、少し詳しく教えていただけませんか
渡辺先生:我々の暮らしの中で、活動的に身体を整えてくれるのが交感神経系、リラックスしたい時や、眠りたい時に動いてくれるのが副交感神経系で、両方しっかりと働いて、それによって良い身体のリズムが生まれます。
RLスタッフ:自律神経のパワーが落ちるとはどのようなことを言うのでしょうか。
渡辺先生:長距離の移動に伴って、時差だけではなくて本来の生活ができないので、日中の活動時に交感神経系が上手く働かない、リラックスしたい時に副交感神経系がきちんと働かない。両方のメリハリがつかず、リズムが全部落ち込んでフラットになっていく。すると自律神経系のトータルパワーが落ち込んで、身体の調整力にも影響が出てきます。眠る時や休憩の時に、働くべき副交感神経系が上手く働かないと、質のいい休養や睡眠がとれません。
RLスタッフ:非常にわかりやすい解説をありがとうございます。時差やリズムのお話をいただいているのですが、そのあたりもう少しお伺いできればと思います。
渡辺先生:身体の中で色々な臓器が、自律神経系でコントロールされています。例えば、脳神経系、循環器系、消化器系、呼吸器系などの活動や、眠りやすい状況にしたり、起きて動きやすい状況にするなどです。そのリズムを整えているのが、交感神経系、副交感神経系で、それぞれの臓器に適切な働きをさせる。そこに1日の24時間リズムを調節しているのが光で、光にあたることでアジャスト(調節)していきます。
RLスタッフ:時差など含め、光でアジャストすることがリズムを戻すことになるのですね。
渡辺先生:ただ、時差がある時に2~3時間分の調整はできていくのですが、それ以上の時差になると順応が遅れます。また、日本からヨーロッパへ行く時は順応しやすくて、アメリカへ行くときは順応しにくいということもあります。旅行日の一日が長くなる場合と短くなる場合での行先での行動の違いも関与します。
RLスタッフ:時差についても勉強させていただきました。最後のテーマになりますが、長距離移動のお勧めのリカバリー方法を教えていただけますか。
渡邊先生:そうですね。一時期はメラトニン療法も流行りましたし、睡眠導入薬を使ってる方もいらっしゃいますが、個人差もありますし常用するのはお勧めできません。やはり、必要なのは、自律神経系の調節だと思います。では、自律神経系の調整を何でするかと言うと、身体の外から調節できるアプローチは循環器系の調整なんですよ。
RLスタッフ:循環器系と言うと、血流促進などになりますか。
渡辺先生:そうですね。そうなるとリカバリーウェアという商品は、理にかなっていると思います。血流を良くすることで循環器系を調整して、自律神経系の調節を行うことができます。そして、体の主要部位やツボ的なところに作用して、呼吸が緩やかになると、心拍の調節ということもできるのだと思います。
RLスタッフ:それ以外の方法もありますか。
渡辺先生:やっぱり軽い運動ですかね、循環器系のリズムを整えるという意味もあるので、運動は大事だなって思います。それと、水分も大きく関係しているので、水分摂取の問題をちゃんと解決していく。水分摂取も飲料だけではなく、保湿というところも含めて、考えてほしいですね。
Profile
【渡辺恭良プロフィール】
理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー
大阪市立大学 名誉教授
大阪公立大学健康科学イノベーションセンター・顧問
一般社団法人日本疲労学会理事長
一般社団法人日本リカバリー協会会長
京都大学医学部卒、京都大学大学院医学系研究科修了(医学博士)、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、同健康科学イノベーションセンター・所長、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・同ライフサイエンス技術基盤センター・双方のセンター長、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックスプログラム・プログラムディレクターを経て、現職。ベルツ賞、文部科学大臣表彰科学技術賞など受賞。