2024-25シーズンより、「明治大学ラグビー部」とオフィシャルリカバリーウェアサプライヤー契約を締結し、選手の休養をサポートしています。ラグビーは、その激しい身体接触と持久力を要する競技特性から、リカバリーとコンディショニングが特に重要視されるスポーツです。今回は、明治大学ラグビー部でストレングス&コンディショニング(S&C)コーチを務める鳴尾氏に、学生アスリートの睡眠管理とコンディショニングについて詳しく話を伺いました。
RLスタッフ:選手を活用した計測などで、いつもご協力いただきまして、ありがとうございます。本日は明治大学ラグビー部の、リカバリーに焦点を当てて、お話を伺えればと思っていますので、よろしくお願いいたします。
鳴尾コーチ:こちらこそ、よろしくお願いいたします。
RLスタッフ:まずは、鳴尾さんのキャリアについてお聞かせください。
鳴尾コーチ:S&Cコーチとしての活動は、2018年からスタートしました。最初は國學院大学ラグビー部で、その後リコーブラックラムズを経て、現在に至ります。それ以前はアスレティックトレーナーとして、複数のチームで活動を行っていました。
RLスタッフ: チームに専属のトレーナーとして関わる前から、アスレティックトレーナーとしての経験を積んできたとのことですが、その経験を活かしながら、学生アスリートのコンディショニングで特に重視されていることは、何ですか?
鳴尾コーチ:そうですね、最も重視しているのは、睡眠時間の確保です。特にうちのチームは早朝練習があるため、睡眠時間の管理が大きな課題となっています。
RLスタッフ:練習は、朝なのですね。
鳴尾コーチ:明治大学ラグビー部は、朝6時半から練習が始まるため、選手たちは5時には起床して朝早くから活動を開始しています。さらに下級生は準備があるため、もう少し前に起きている選手もいると思います。
RLスタッフ:選手も朝早くに起きるための工夫が必要ですね。
鳴尾コーチ:このスケジュールを考えると、遅くとも22時までには就寝する必要があります。しかし、学生である以上、勉強や課題もあり、なかなか理想的な就寝時間の確保が難しいのが現状だと思います。
RLスタッフ:その状況で、鳴尾コーチが対策として選手に実践させていることなどありますか。
鳴尾コーチ:なかなか難しいのですが、睡眠に対する意識付けは、声がけをして促しています。
RLスタッフ:まずは、睡眠に対する考えをしっかりと持つ、ということですね。
鳴尾コーチ:そうですね、最初にそう思ったのは、リーグワンの選手を見ていた時に、外国籍選手の睡眠に対する意識の高さに驚かされたことがキッカケでした。そこから、コンディショニングに睡眠を取り入れ、大切さを伝えています。
RLスタッフ:外国人選手と日本人選手で、睡眠に対する意識に違いがあるんですね。
鳴尾コーチ:そこは顕著な違いがありますね。外国人選手は睡眠時間に対する意識が非常に高く、8時間以上の睡眠確保が当たり前という考えが浸透していると思います。
RLスタッフ:睡眠時間に対する意識は、日本人の共通した問題なのかもしれませんね。
鳴尾コーチ:実際、リーグワンでコーチを務めている方からも、外国人選手の睡眠に対する意識の高さについて話を聞いたことがありますし、遠征時に同じ部屋になると、日本人選手が夜遅くまで携帯を見ていることに対して、外国人選手から『なぜもっと早く寝ないんだ』という声が上がることもあり、睡眠に対する教育や意識の違いを強く感じます。
RLスタッフ:そういうお考えがあって、べネクスのリカバリーウェアを導入いただいたのですね。
鳴尾コーチ:本当に、良いタイミングでお話をいただいて、助かっています。
RLスタッフ: 選手の皆さんの感想などいかがですか。
鳴尾コーチ:ウェア導入の当初から、入眠の速さや睡眠時間の確保、目覚めの良さなどで効果を実感する選手が多かったですね。現在では完全に習慣化され、遠征先にも必ず持参する選手が増えています。リカバリーウェアを着用することで、選手たちの睡眠に対する意識も自然と高まってきているように感じます。
RLスタッフ:1年生から4年生と、学年によるコンディショニングの違いはありますか。
鳴尾コーチ:ONETAPSPORTSなどのコンディショニング関連のデータを見ていると、特に疲労からの回復率に明確な違いが見られます。同じ試合数を経験しても、1年生の方がはるかにフレッシュな状態を保てています。4年生は過去の怪我の影響もあり、回復に時間がかかる傾向にありますね。
RLスタッフ:まだ20歳前後のアスリートでも、差が出るのですね。
鳴尾コーチ:この違いは、単に年齢だけの問題ではないとは思いますが、過去の怪我の蓄積や、トレーニング量の違いなど、様々な要因が絡み合っているので、結論付けはできませんが。
RLスタッフ:明治大学ラグビー部を、約3年間指導されてきて、最初の頃と現在で方針に変化はありましたか。
鳴尾コーチ:変わりましたね。大きく変わったのは、メッセージの伝え方です。当初は選手たちに多くの選択肢を提供していましたが、それが逆効果だと気づきました。
RLスタッフ:ある程度、導いてあげる方が良いということですか。
鳴尾コーチ:学生アスリートの場合、あまりに多くの選択肢があると、かえって何を選べばいいのか迷ってしまい、結局何も実行できないという状況が起きていました。そこで、現在は栄養、睡眠、リカバリーの3つに焦点を絞って、シンプルなメッセージを伝えることを心がけています。学生アスリートの場合、プロ選手と違って自己管理能力がまだ発展途上なので、シンプルな目標設定が効果的だと感じています。それもあり徐々に浸透してきているかなと思います。
RLスタッフ:最後に、今後の取組についてお聞かせください。
鳴尾コーチ:睡眠の質を上げることで、限られた環境の中でもコンディションを整えることは可能なので、そこは引き続き実践をしていきたいです。ただし、それを実現するためには、選手たち自身が睡眠の重要性を理解し、実践する必要があります。
RLスタッフ: 選手たちの自主性を重視しながらも、適切なガイダンスの必要性がありますね。
鳴尾コーチ:私たちスタッフは、選手たちが正しい選択ができるよう、継続的なサポートと教育を行っていきたいと考えています。特に睡眠管理については、今後も重点的に取り組んでいく予定です。
RLスタッフ:忙しい学生アスリートだからこそ、睡眠管理の重要性と、特に、シンプルな目標設定と継続的なサポートの視点は、他のスポーツチームにも参考になりますね。本日は、貴重なお話をいただいて、ありがとうございました。
■Profile:
鳴尾 健(なるお けん)
明治大学ラグビー部S&Cヘッドコーチ。京都府出身。國學院大学ラグビー部、明治学院大学女子ラクロス部、リコーブラックラムズ東京を経て、2022年6月より明治大学ラグビー部S&Cヘッドコーチに就き、現在に至る。