アスリートのリカバリーに影響を及ぼす重要な要素として、食事の質が注目されています。
今回は、アスリートと企業などを繋ぐ仕事をしていて、アスリートの食事サポートも行っている、トレイルカンパニー代表 柏田さんより、日常のサポート業務、ラグビー選手サポートの背景、食事サポートの具体的内容、選手の体調管理、そして昨今注目をされているグルテンフリーなどについてお聞きしました。
RLスタッフ:はじめに、柏田さんが普段どのようなお仕事をして、アスリートのサポート業務をしていらっしゃるのか、お聞かせください。
柏田氏:大きく二つに分かれています。まず一つが、企業とアスリートを繋げる橋渡しをしています。まさしく今回のように、VENEXさんとアスリートを繋いで企画を作る、などです。もう一つは、食事でアスリートのコンディションを整えてもらうようなサポートをしています。
RLスタッフ:アスリートの食事のサポートについて、対面もあると思いますが、今だとオンラインなどを活用しているのでしょうか。
柏田氏:一番多いのは、LINEですね。すぐにやり取りがしやすいので。後はInstagramを活用しています。サポート選手をフォローしていて、直接DMを送ることもありますし、投稿している試合や食事の写真に対してコメントをいれることもあります。実は、皆さんが見ている写真の裏では色々と動いているんです。
RLスタッフ:Instagramの活用ですか、進化してますね。柏田さんはラグビー選手のサポートが多いですが、そのあたりの経緯を教えていただけますか。
柏田氏:私自身は、1980年代からラグビーを見ています。近鉄花園ラグビー場が近くにあって、高校ラグビーその後大学ラグビーにはまって、私の地元が京都なので同志社大学を応援していました。そして就職したワールドという会社にラグビー部があったので、社員は応援しに行っていました。
RLスタッフ:具体的に、アスリートの食事サポートはどれぐらい前からされていたのですか。
柏田氏:2012年ぐらいですかね。きっかけは、私の子供がアレルギーで食事がものすごく大変だったので、専業主婦の子育て期間約10年に、世界中の食材を学ばせていただいたことです。例えばイタリア料理、ハラルフード、トルコ料理など、皆さん食材の制限があるのですが、非常にヘルシーな料理が多くて、それらを試しているうちに子供たちのアレルギーが改善していきました。そして、アスリートへのサポートですが、最初は花粉症の問題からなんです。
RLスタッフ:体重やパフォーマンスなどの課題ではなく、花粉症なのは意外です。
柏田氏:ラグビーって、外で風の強い中で競技をしているのですが、やはり花粉症の方は多いようです。食事の改善で花粉症対策が出来るよと、話したところから始まりました。そこから様々なご縁を経て、2016年からは様々なカテゴリーの方々にも食のサポートを始めることになったんです。
RLスタッフ:ラグビー選手が他のスポーツ選手と違う点などあれば、お聞かせ願えますか。
柏田氏:そうですね、あれだけ激しいぶつかり合いをするので、体のダメージが非常に大きいスポーツです。それ以外に、体を大きくしなくてはいけないこともあります。カロリーもたくさんとって、ダメージした部分を回復させていくなどの両面が必要です。
RLスタッフ:一番大事に指導されていることはありますか。
柏田氏:すごく意識しているのは、快眠・快食・快便です。ちゃんと眠れることで、ちゃんと栄養をとれる体になり、そして当然出さなきゃいけない、そのスムーズな流れっていうのを作るようにお伝えしています。
RLスタッフ:そのような流れを作る指導方法はどのように促しているのですか。
柏田氏:まず、忙しくても絶対話す時間をとっています。第1優先に実際に会いに行くっていうのもあります。サポートをしていると、びっくりするぐらい、同じような体格の選手でも、食べたら食べた分だけ太る人もいれば、逆の人もいるんです。私がサポートしているのは、リーグワンの選手が多いので、量のコントロールは出来るので、それよりも何を食べるかなどの質を考えます。
RLスタッフ:食のカウンセリングから入るのですね。
柏田氏:アレルギー持ちの選手もいれば、お腹が弱い人、選手によって味覚も様々です。どんなに正しい食材選択でも、やっぱり美味しく食べて、美味しく体の栄養になるものを見つけ出したいので、個人の相談は非常に重視しています。特に、今はクラブハウスの食事は充実していますので、それ以外の食事を大切に考えています。
RLスタッフ:先ほどの花粉症対策というと、具体的にはどのようなものでしょうか。
柏田氏:コンディショニングの食事を取り入れるのに、先ほど出た、花粉症対策はよく言われるので、腸活が目指すテーマになることは多いです。
RLスタッフ:なるほど。そうすると腸活のサポートは具体的にどういったものですか。
柏田氏:大きく二つあって、一つは、究極、「ご飯」を食べましょうってことですね。特に、ご飯と味噌汁を食べましょうってことは日本人の選手に合うと思います。グルテンフリーにもなりますし、ご飯とお味噌汁は栄養としてもマッチングしやすく、アミノ酸のスコアが非常に良い組み合わせなので。
RLスタッフ:お米だと、玄米が良いと聞くことは多いのですが、どこまで考えればよいでしょうか。
柏田氏:お米は玄米が理想なのですが、手間がかかるイメージがあると思うので、必ずしもこだわらなくても良いと思います。また玄米粉などもありますのでうまく活用してほしいです。もう一つは、発酵食品を取り入れることですね。お味噌汁も発酵食品の味噌を使いますし、納豆やお漬物、甘酒なども発酵食品で、意外と日本食の多くで発酵食品は見つかります。
RLスタッフ:お話の中であったグルテンフリーについて、最近は疲労との関係が言われていますが、簡単にお話しいただけますか。
柏田氏:グルテンフリーとは、小麦、大麦、ライ麦などのグルテンを含まない食品や食事スタイルのことを言うと思います。特に、最近では健康志向の人々や食品アレルギーを持つ人々にも人気があります。
RLスタッフ:具体的に、グルテンを含む食事をすると何が問題になるのでしょうか。
柏田氏:グルテン過敏症と言われる主な症状は、小麦食品を食べると腹痛を起こしたり、慢性の便秘、下痢、肥満・むくみ、免疫機能の低下によるアレルギー症状が出たり、慢性的な集中力の低下や精神的な不調、そして疲れが取れない、などがあります。
RLスタッフ:かなり広範囲な症状に影響があるのですね。
柏田氏:もちろん個人差がありますので、全ての人に当てはまるわけではありませんが、現代社会では多いと思います。特に問題なのがグリアジンという物質で、食欲を増進させる中毒性があると言われています。パンやケーキ、ピザやパスタ、ラーメンなどの小麦食品って、なかなかやめられないですよね。
RLスタッフ:どんな方にお勧めしたいなどありますか。
柏田氏:私自身もグルテンフリーを最初からやっていたわけではなくて、むしろパンが大好きで、パスタもよく食べていました。でも、なんでこんなに目覚めが悪いんだろうとか、午後になると眠くなってしんどくなってくるなど、特に睡眠に課題を持っている方には試してもらいたいです。食から、コンディションを自分が作る、そして、ちゃんとリカバリー出来る睡眠をしてほしいです。
RLスタッフ:私は、2023年の10月に柏田さんのセミナーを受けて、パンだけはやめてみましたが、麺類などはまだやめられていません。グルテンフリーは同じように、始める・続けるに敷居がある方も多いように感じます。
柏田氏:そうですね、僕は毎日ラーメンを昼に食べています、なんて選手もいて苦労した覚えがありますね。その人にラーメンを3日に1回にしませんかっていうのも結構きついわけですよ。毎日ラーメン食べたい人なので、まずは家のインスタントラーメンを、グルテンフリーのものに変えてみる。特に麺類は代替え商品も多くある時代ですので、そこから始めていただくといいかもしれませんね。
RLスタッフ:腸活やグルテンフリーなどの意識は選手の中では浸透しているのでしょうか。
柏田氏:サポートしている選手の方々は、今年の合宿が楽に過ごせたなどの実感はいただきますね。特に、メンタルも変わってくるっていうのが大きいと思うんですよ。ただ、すごく多いかと言うと、まだまだかなと思います。
RLスタッフ:やはり、年齢が若い方はそれほど意識していないなどありますか。
柏田氏:そうですね、やっぱり30歳近くなってから意識が高くなるとは思いますが、若い選手でも、チームの模範となっている選手が腸活などを取り入れていると、その影響を受けて実践するということは多いですね。
RLスタッフ:なんだか、ベネクスのリカバリーウェアに似ていますね。浸透の仕方が。
柏田氏:確かに同じで、面白いですね。やはりみんなの目標になる選手が使いだして、その選手を目指している方や一般の方に浸透するというのはありますね。そこは絶対大きいと思います。
RLスタッフ:本日はありがとうございました。今後もラグビー選手の食事とリカバリー事情を、一緒に発信を出来ればと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
Profile
【柏田 裕美 プロフィール】
Trail Company(トレイルカンパニー)代表
体に優しく、美味しい食事を提案する食財コーディネーター
オーガニックフードやグルテンフリー、ハラール、ビーガンフードを用いたワークショップを全国各地で開催、アスリートの食事サポートにも力を入れている。