【専門家インタビュー】湘南ベルマーレフットサルクラブ 府川トレーナーVol.2「スポーツ選手に限らない。トレーナーが社会・地域のなかで担う役割」

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202324シーズンより、ベネクスの原点、神奈川県小田原市を中心に活躍するプロフットサルクラブ「湘南ベルマーレフットサルクラブ」とオフィシャルリカバリーウェアサプライヤー契約を締結し、選手の休養をサポートしています。今回は選手の活躍を支える府川トレーナーにリカバリーやトレーナーとしてのお考えについてお伺いしました。

前回までの記事はこちら→【専門家インタビュー】湘南ベルマーレフットサルクラブ 府川トレーナーVol.1「自分と向き合う意識が選手寿命を延ばす」


RLスタッフ:府川さんは高校時代に全国大会にも出場する、愛知県の名門・東邦高校でプレーした経験ののち、トレーナーになってからはフットサル畑一筋だとお伺いしました。

府川トレーナー:専門学校を卒業して、プロとして雇ってもらった先が名古屋オーシャンズというプロフットサルチームでした。入社した年はちょうどFリーグがはじまる年でもありましたが、当時フットサルのことはほとんど知りませんでした(笑) 5年の契約を終え、新たなチャレンジをしたいなと思っていたところ、たまたま湘南ベルマーレフットサルクラブの当時のチーフトレーナーに声をかけてもらい、こちらに来ました。

RLスタッフ:フットサルに導かれて来たとしか思えないですね。

府川トレーナー:かっこよく言えばそうですが、名古屋の契約が終わった時点では、自分としてはもうフットサルにかかわることはないだろうなと思っていたぐらいでした。でも想像に反してありがたいことにご縁があり、今に至っています。当時のベルマーレはプロチームではなかったので、治療院に所属して、ベルマーレに出向させてもらう契約でしたが、自分にとってはそれが新鮮でした。

RLスタッフ:どういう変化があったのでしょう。

府川トレーナー:ずっとプロの世界でアスリートだけを見ていたのが、地域にお住いの一般の方を治療院で見ることもできるようになったのです。現在は、独立して治療院を経営しながら、個人でチームと契約してもらっています。健康経営で企業の手伝いをさせてもらったり、他のチームとも契約して、若いスタッフを派遣したりしています。

RLスタッフ:なるほど、アスリートと一般の方両方のケアをされるようになったのですね。アスリートと一般の方の違いはどんなところにあるのでしょうか。

府川トレーナー:違うようでいて、実は一緒の部分が多くあるのです。アスリートは体を酷使して、より結果も求めて追い込んでいく面がありますが、一般の方は健康であればそれでいい。求める閾値がアスリートに比べて低いというだけの話であって、どちらも健康な状態を目指すことには変わりはありません。アスリートだったら5セットトレーニングするところを、一般の方は1セット毎日やるだけで健康になれる。体力が保てたら、その方にとっての日常は変わります。その方にあった方法でバランスを調整するだけであって、アスリートも一般の方も実はやることはそれほど変わらなかったりするのです。

RLスタッフ:トレーニングする回数は違うものの、アスリートとメニューをこなしていると思うと自信がつきますし、やる気が出ますね(笑)

府川トレーナー:そうなんですよ。みなさん運動のハードルを勝手に上げているだけです。運動しなさいと言われたら、ジムに行かなきゃ、プールに行かなきゃと思われがちですが、家の中でたった10分、継続してやるだけでも最低限の体力や健康は維持できますし、変化も見えやすいので一般の方にお伝えすることもとっても面白いです。

RLスタッフ:私も含め、一般の人々は、体の変調に気づけなかったり、無意識であるがゆえに、症状が出てきてから「何かしなければ」とようやく思うところが多いように思います。

府川トレーナー:辛くなってから行く、病気をしてからやっておけばよかったと思うのではなく、心身ともに健康な状態をベースとしてもらうために、トレーナーが役に立てることは多々あると思っていて。そんなことを伝えながら、社会の中でトレーナーが担う役割を増やすことや、地位を高めていけたら素晴らしいなと思っています。

RLスタッフ:湘南ベルマーレフットサルクラブは地域における活動がとても活発だと思っています。佐藤社長が、「社会性と経済性」の両方を追求しながら、ステークホルダーと共存共栄していくゼブラ企業*を目指す、というお話もとっても興味深かったです。

府川トレーナー:そうですね。私自身もいろいろなパートナー企業の皆さんと交流させていただいたり、企業の社長さんとお話できる機会があったり、治療にお越しいただくなど、様々な交流をさせていただいていますね。自分が表舞台に立たせてもらえているおかげで、子どもたちや一般の方にも自分のことを知ってもらうことができ、地域でのつながりを持つことができています。以前、地域の子どもたちにケガ予防のイベントを実施したこともありました。

RLスタッフ:ベネクスも同じ神奈川県としてぜひ何かご一緒できればと思っています。

最後にフットサルについて少しお伺いしていきたいのですが、先日、フットサルをはじめて観戦し、サッカーとの違いに驚きました。

府川トレーナー:そうですね、体の使い方やフィジカル的な負荷がサッカーとは全く異なります。心拍数やその強度も違ってきます。

RLスタッフ:フットサルをあまり知らない方に魅力を含め教えていただきたいです。

府川トレーナー:まず大前提としてサッカーとは全く違うスポーツであるということを伝えつつ、攻守の切り替えの激しさ、目を離す隙が、暇がないエキサイティングなところですね。あとは室内スポーツなので、天候に左右されないので女性も楽しみやすいと思います。

RLスタッフ:プレーの展開の速さには驚きました。

府川トレーナー:フットサルはすべてにおいて常に全力です。身体的にも心理的にも負荷がすごくかかっています。シュートを打ったと思ったら、すぐ守備に戻らなきゃいけない。サッカーもぶつかりあうような激しい面やトップスピードで走ることもありますが、スペースがたくさんあるので、局面や戦況を見て、例えば右サイドで攻防が繰り出されていたら、左サイドの人はジョギングしたり...ということはできる。でもフットサルの場合は、ピッチが狭いので、右側でプレーが繰り広げられていてもいきなり左にパスが来ることもある。ピッチのなかでは休む間がありません。

RLスタッフ:とっても激しいスポーツなのですね。

府川トレーナー:だから交代が自由で、常にフレッシュな選手が全力でプレーして、また交代して...の繰り返しです。

RLスタッフ:バスケットボールが近いでしょうか。

府川トレーナー:バスケは点が入ったら少し動きが止まる時間がありますが、それよりも過酷だと思いますね。スポーツのなかでもかなり過酷な部類に入ると思います。前半後半それぞれ20分の試合時間ですが、トップレベルではキーパー以外のフィールドの4人においては、フル出場するのはほぼ不可能だと思います。そんな選手がいたら怪物です。

RLスタッフ:試合時間は20分ではありながらも、実際のプレー時間はもっと長いですもんね。

府川トレーナー:35分とか、状況では倍の40分近くになりますね。ピッチのなかでは心拍数が常に180190くらいです。一般の方だったらゼイゼイハーハーの状態。もっと言えば、トップスピードから急にストップするなど、急ブレーキの連続です。一般の人がプレーしたら筋力が耐えられなくてケガしてしまう場合もあるくらいです。

RLスタッフ:いろいろな企業内にも部活動としてや趣味でフットサルチームがあるので、サッカーよりもライトなのかと勘違いしておりました...。

府川トレーナー:サッカーほどジャンプはしないので使う筋肉がサッカーとは異なります。以前は大学までサッカーをやっていて、フットサルに転向する子が多かったですが、少しずつ子どもの頃からフットサルをやってきているという選手も出てきました。

RLスタッフ:2007年にFリーグができて、広がりが出てきたのでしょうか。

府川トレーナー:そうですね。徐々に子どものうちからも、サッカーかフットサルを選択できるという環境ができてきました。各チームサテライト(育成世代のチーム)もでき、Fリーグのトップの下に、関東リーグなどもあり、フットサルの普及という意味では、リーグ戦がピラミッド状にできていますね。

RLスタッフ:今シーズンの試合では、平日の夜開催も実施されていましたね。会社帰りの方が多かったですか。

府川トレーナー:比較的子どもも多かった印象があります。特にサッカーをやっている子たちは週末に自分の試合があったりして、土日だと観に来られないんですよね。平日の夜だと地元の子たちが観に来られるのだなと思いましたね。

RLスタッフ:地域と一体で応援できるのはいいですよね。魅力もさらに理解できたので、私たちもまた応援にお伺いしたいと思います! 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

*湘南ベルマーレフットサルクラブは、中小企業庁が公募していた「令和6年度地域の社会課題解決企業支援のためのエコシステム構築実証事業」において、関東圏、スポーツ団体として唯一選定されている。

Profile

府川 俊一朗(ふかわ しゅんいちろう)

1982年愛知県生まれ。東邦高等学校卒業後、2002年河合塾学園トライデント健康科学専門学校スポーツ科学学科(現 名古屋平成看護医療専門学校)のアスレティックトレーナー専攻に入学。3年間同専攻に在籍ののち、2004年同校はり・きゅう学科に再入学。2007年に卒業後、Fリーグ名古屋オーシャンズとプロのトレーナーとして契約。5年後、2012年湘南ベルマーレのフットサルクラブに移籍、専属トレーナーとなる。フルタイムでチーム帯同しつつ、自身の経営する治療院「F PLUS(鍼灸&コンディショニング)」では、アスリートをはじめ一般向けにも治療とトレーニング指導を行っている。

湘南ベルマーレフットサルクラブ
https://www.bellmare-futsal.com/

F PLUS(鍼灸&コンディショニング)
https://x.com/fplus_condition

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