【Think Athleteインタビュー】ライフセーバー 三井結里花選手 Vol.2「日本人が世界との差を埋める戦法は『リカバリー』」

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目標に向かい進み続けるために、コンディショニング作り、そしてアスリート人生を設計できる方を、Think Athleteと定義。ベネクスとしては、リカバリー環境のサポートにより、悔いのないアスリート生活、人生のサポートすることを目指しています。

今回はThink Athleteの第四弾として、ライフセーバー三井結里花選手に取材をさせていただきました。

前回までの記事はこちら→【Think Athleteインタビュー】ライフセーバー 三井結里花選手 Vol.1「世界一の先にある目標は『ライフセーバーを必要としない海』」 | 休養・リカバリーウェアのVENEX(ベネクス) (venex-j.co.jp)

RLスタッフ:ベネクスはいつ頃から使っていただいていますか。

三井選手:確か2016年頃だったと思います。それまでケアにはコンプレッションウェアを使っていました。ライフセービングの強化合宿に行くと、練習と練習の合間も短くて、合宿中はとにかく疲労を取りたいのと、むくみを取りたいので、みんなしてぎゅっと固めるスパッツタイプのものをよく履いていました。それとは真逆の締め付けのないベネクスのウェアを履いてみたら「全然違う。これで、本当に最初はリカバリーできるのかな?」なんて思ったぐらいでした(笑)

RLスタッフ:ライフセービングは競技自体も、練習も非常にハードで、選手のみなさんが常に疲れている状態なんですね。

三井選手:そうですね。私がやってるオーシャンウーマンは、海で行われる競技です。トライアスロンのミニバージョンのような形で、スイム・ボード・スキー・ランの4種目を一人で行います。海に向かって走って飛び込み、泳ぎ、陸では走り、ボードを漕ぎ、カヤックを漕いでと、大体15分から20分ぐらいのレースで、競技そのものがかなり過酷です。それに加え、スケジュールもハード。一日の中で予選・準決勝・決勝が続けて行われます。海のコンディションも刻一刻と変わるため、風が強くなったりすれば、予選と決勝の間が15分しかないとか、予定通り進まないこともよくあります。

RLスタッフ:過酷なレースを終えた直後に、また次のレースに備えるというのは、体力もですが、強靭な精神力が問われそうです。

三井選手:そうですね。ですので、競技の面では、いつでも万全で行けるいい状態でスタンバイをしておきたいと思っています。監視活動においては、何かあった時に全力で救助に行けるように、疲労を取ることを重要視していて、常にフレッシュな状態でいるよう工夫しています。

RLスタッフ:ベネクスを着る以外にも、リカバリーのために実践していることはありますか。

三井選手:競技では食事・睡眠など、トレーナーさんに任せ切りにしないで、セルフコンディショニングでストレッチを行うなど、リカバリーのためのトレーニングをするのが、当たり前になっています。監視活動では、ずっと塩を浴びていると疲れがたまるので、こまめに水を浴びたり、体を拭いたり、冷えないようウエットスーツを着たりとか。かなりいろいろなことに注意しています。

RLスタッフ:ライフセーバーの方々は、休養に対する知識や、考え方が特に根付いているように思いましたが、勉強したり、教えてもらう機会があるのでしょうか。

三井選手:トレーナーさんから教えてもらうケースももちろんありますし、ライフセービング日本代表チームは、競技者、ライフセーバーとしても、コンディションを整えることに対して意識が高いと思います。もちろん人によってリカバリーに対する意識の差はありますが、私は世界との差が出るのはそこだなって思っています。

RLスタッフ:そこまでリカバリーに意識を持たれたのはどうしてでしょうか。

三井選手:世界選手権でとにかく日本チームとしての結果を出したかったし、個人種目でもメダルを取ることを目標としていました。ライフセービングが国技であるオーストラリアと、ニュージーランドがすごく強いチームなんですが、やっぱり実力差がすごくあって。初めて世界大会に出場した時は、見るからに身体的な差があるのを目の当たりにし、全く敵わないんじゃないかって思ったところがありました。ニュージーランドの選手は同じ水深を走れるのに、私は泳がなきゃいけなかったりとか。

RLスタッフ:それでは体格が競技結果に大きく影響しますね。

三井選手:はい。でも、よくよく観察して考えてみると、ライフセービングの世界選手権は主に海が舞台なので、突発的なスケジュール変更も多い。急に「行くぞ」って言われて、準備できてない人が行くと転んでしまったり、万全じゃないと力を出しきれなかったり、そういったところがあるんですね。ということは、自分が常に準備できていて、いつでも全力だったら、もしかしたらチャンスがあるんじゃないかと考えるようになりました。そのためには常に自分のコンディションを良くしておけばいいんじゃないかと思い至り、リカバリーについて勉強したり意識するようになりました。

RLスタッフ:その考え方が、まさに金メダルにつながったのですね。

三井選手:そうですね。やっぱりポイントはここだったんだなと思います。手も足も長くはならないから、やっぱりそういうところが大切で、それが日本人である私がやるべきことかなと思いました。まあ大らかな気持ちでいることも大切なんですけど()

RLスタッフ:よくリカバリーの説明で、充電の話をするのですが、まさに一緒で感銘を受けました。携帯電話を充電し忘れてしまうと、本当は100%のところを50%でその日過ごさなければいけないじゃないですか。

三井選手: まさにそうですね。自分の体をよく知って、コンディションを組み立てておくのも、大切な1つの戦法だなって思うんです。

Profile

◇ライフセーバー 三井結里花選手

199237日生まれ。日本大学入学後、ライフセービングを始める。ライフセーバー資格取得後、千葉県の九十九里蓮沼海岸で監視活動を経験。ライフセービングスポーツでは、2010年より強化指定選手。2019年に全日本ライフセービング選手権で9連覇。2022年11月に出産後、わずか半年で世界大会への出場権を獲得し、10月開催の世界選手権パドルボード競技にて金メダルを獲得。2023年も再び世界選手権に向けて日々練習を重ね、将来「ライフセーバーが必要とされない海」の実現を目指して活動中。

2016年: ライフセービング世界選手権オーシャンウーマン 5位入賞
2019年: 全日本選手権200mスーパーライフセーバー 9連覇
2022年: ISA World SUP and Paddleboard Championshipプローンディスタンスレース(パドルボード) 金メダル

 ※オーシャンウーマンとは:スイム・ボード・スキー・ランの4種目を1名で行います。レース前に実施される抽選で競技順が決定し、その順番によって展開が大きく変わります。各種目の技術と4種目をやりきる体力、そして状況判断力と、総合力が問われるライフセービングスポーツの競技です。

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