目標に向かい進み続けるために、コンディショニング作り、そしてアスリート人生を設計できる方を、Think Athleteと定義。ベネクスとしては、リカバリー環境のサポートにより、悔いのないアスリート生活、人生のサポートをすることを目指しています。
今回はThink Athleteの第19弾として、デフバスケットボールの丸山香織選手に取材をさせていただきました。
RLスタッフ:まずは、丸山選手のご経歴を教えてください。
丸山選手:私はバスケットボール競技を中1から始め、高校卒業後からデフバスケットボール競技を始めました。インターハイ、ウィンターカップ、国体など様々な大会に出場し、デフバスケットボールでは2024年アジア大会で金メダルという成績を収めました。
聴覚については3歳の頃から耳が聞こえづらくなり、幼稚園から毎日発音の練習を積み重ねていました。幼稚園の時はろう学校(聴力に障害のある子どもや生徒を対象とした学校)に通いつつ、一般の幼稚園にも同時に通って、その後も小学校から高校までは一般の方と同じ学校に通っていました。
耳が聞こえなかったので席を1番前にしてもらうよう先生にお願いしたり、授業がわからない時は友達に聞いたりする学校生活を送っていました。
RLスタッフ:様々なスポーツがある中で、なぜバスケに興味を持ったのでしょうか?
丸山選手:元々体を動かすのが好きで、小学校1年からバレーをやっていたのですが、中学校から何か違うスポーツをしてみたいなって思ってバスケを始めたのがキッカケです。
当時バスケの顧問の先生がとても良い方で聴覚に理解があったのと、その先生からバスケを教えてもらいたくて転向しました。
その先生がいなかったら今デフバスケもしてないですし、先生に感謝ですね。
RLスタッフ:素敵なエピソードですね。18歳になるまではデフバスケの存在を知らなかったということなのですが、デフバスケの存在はどのようにして知ったのでしょうか。
丸山選手:私の父親の知り合いがデフバスケの選手でした。その選手が私のことを見つけてくれて、同じ聴覚障がいを持っている中でどんなふうにプレーするんだろう、面白そうだなと興味を持ったのと、新しい世界に飛び込んでみたくて挑戦しました。
RLスタッフ:初めてデフバスケをやってみた時の感想を教えてください。
丸山選手:当時は手話があまりできなかったのですが、手話や口元の動きを見てプレーする人たちの姿を見て、いろんなコミュニケーション方法があって面白いなと思いました。聞こえる人だったら「ここにいるよ」とか「おけおけ」など声を出してコミュニケーションを取るのですが、デフの人は全く聞こえないので、視覚で情報を得てプレーしないといけないということを初めて知りました。
RLスタッフ:当然かもしれませんが、手話かアイコンタクトだけのコミュニケーションでプレーされているのですね。ただ、一概にデフと言っても、いろいろな方がいるんですよね。
丸山選手:そうですね。人それぞれ聞こえ方も違いますし、聴覚障害の程度はさまざまです。コミュニケーションの取り方ももちろん違います。手話の中でも"日本語対応手話"と"日本手話"があって、日本語対応手話は日本語の文法に沿った手話なんです。
その一方で日本手話は、顔とか肩とか身体の一部を使って表現します。相手によってコミュニケーションの取り方が違うので、それもまた面白いです。
RLスタッフ:丸山選手はデフのチームでの活動だけではなく、東日本地域リーグという実業団リーグで聴者の選手に混ざって練習しているのですよね?
丸山選手:はい。デフの女子バスケチームが大阪・福岡・東京にしかないので、技術面を上げるためには聴者のチームで練習しないと厳しいのが現状です。そのため、聴者の社会人バスケチームに入ってプレーしています。
ありがたいことにチームメイトが自分のために手話や身振りでのコミュニケーション覚えて、その中でプレーしているのでとても力になっています。
さらにレベルの高いところにいさせてもらっているので、恵まれている環境でバスケができていることもありがたいですね。
RLスタッフ:聴者のチームに入ってみて、自分の視野が広がったなという感覚はありますか。
丸山選手:それが、広くなるよりむしろ狭くなりました。
RLスタッフ:というと?
丸山選手:デフの場合、視覚から情報を得ないといけないので自然と視野が広がりますが、聴者のチームでは、決まった人をマークして守るというのが始めから決まっていることもあって。それに集中してしまうあまり、周りが見えてないことをチームメイトに指摘されたこともあって、意識して周りを見ないといけないのだと気づかされました。
聴者の方だったら後方から声がけがあった時に振り返らなくてもいいですが、私の場合は絶対に振り返らないといけないのも、個人的には視野が狭くなる原因かなと思います。
RLスタッフ:デフの環境の時と、聴者のチームに入った時は意識が変わるのですね。そんな中で、デフバスケを知らない人にぜひ魅力を教えてください。
丸山選手:体育館に入ると、聴者のバスケは、声援やたくさんの言葉が飛び交い、いろいろな音が鳴っています。でもデフのバスケは体育館に入ったらボールの跳ねる音とバッシュの音だけなんですよ。コミュニケーションは、手話やサインを決めてプレーしているので、視覚で楽しめる静かなバスケです。ぜひ音のないバスケを体験していただきたいです。
RLスタッフ:実際丸山選手にお会いすると優しくて可愛らしい感じがしますが、プレイスタイルはパワー系だとお伺いしました。
丸山選手:実は、、スピードと体力があまりないんです。その代わりにパワーだったら自分はいけるんじゃないかって思って、それを持ち味にしてシュートなどもパワーを使ったプレーを意識しています。もちろん体格が大きい人に対しては厳しい場面もありますが、負けないように頑張っています。
■Profile:
丸山 香織(まるやま かおり)
1998年12月17日生まれ、福井県出身のデフバスケットボール女子日本代表。
2018年:U21世界選手権出場、銀メダル/個人としてベスト5受賞
2019年:世界選手権 ベスト7を受賞
2024年:アジア太平洋ろう者バスケットボール選手権大会 金メダル/個人としてベスト5受賞
〈所属・チーム歴〉
福井県立足羽高等学校
AFBB 東地域社会人リーグ (現在)
scratch(デフバスケットボールクラブチーム) (現在)