Story

 開発ストーリー

介護⽤の床ずれ解消製品の開発から始まった私たち。「⼈間が本来持っている⾃⼰回復⼒を最⼤限に発揮させること」をコンセプトに試⾏錯誤を繰り返し、リカバリーウェアを開発しました。製品の改良は今も続けています。

1.起業のきっかけ

介護現場で知った
悩み「床ずれ」を自らの力で
解消したい。

生死をさまよった高校時代。一度は死にかけた命、挑戦の礎となる。

中村の起業の原点は高校2年。のめり込んだラグビーの神奈川県大会決勝で相手選手と衝突し、脳内出血となり生死をさまよう。「一度、死にかけた命。やれること、やりたいことを全力でやろう」と決心。芽生えた座右の銘は「失敗したからといって命までは取られまい」。挑戦の礎となる。
もともと、「⾷卓に着くと商売の話しばかり」と話すとおり、親族・親戚中が商売を営む環境で育ったこともあり、起業への抵抗感はなかった。「3年間社会に出て勉強しよう」という気持ちでコンサルティング会社へ⼊社した。

就職した介護現場で知った悩み「床ずれ」。高齢者を助けたいと起業。

「3年後に起業してよい」と言われ入社したコンサルティング会社は当時(2003年)、介護保険制度の創設で民間会社の介護分野の参入が認められた頃で、時流に乗っていた。中村は、有料老人ホームの新規立ち上げや入居者の募集営業などを担当。途中からは老人ホームに住み込み、仕事の傍ら自身も、介護ヘルパー2級の資格を取るなどし、現場経験も積む。そこで知ったのが、寝たきりの老人の多くが悩む「床ずれ」問題。自らの力でこの人たちを助けたいと思い、入社当時の約束通り、3年で退職。新しいものを創造する、「クリエイティブ(Creative)」と「ネクスト(Next)」を由来とした、株式会社ベネクスを設立。

初期メンバーは片野・中村・星の3人。勢いだけでつくった会社と勢いのある社員。「何でもできる。世界を変える」と意気揚揚も、設立3カ月で壁にぶつかる、「仕事がない!」。
とにもかくにも仕事がないので、他社商品の販売代行で食いつなぐ日々が続いた。

2.介護用マットの開発と挫折

苦労して新素材を開発するも、
売れない。

新素材の構想を閃くも、素材商社や開発会社は門前払い。

「床ずれを解消する自社製品の開発を」との想いが募り、「床ずれ」の原因である血行障害を治す血流改善の方法を模索し、2005年頃から開発を開始した。
お年寄りの方は一般的に若者よりも血流が悪く、特に寝たきりの方は動かないため、血流がとても悪い。その為、最初は血流を阻害しないように体圧分散し、一箇所に負荷がかからないようなベットパッドを試作したが、いくら体圧分散しても結局もともとの血流が悪いことは変わらず、対処療法的であり問題の根本解決に繋がらなかった。

そこで、根本的な血流改善を促すためにはどうしたら良いか?と考えたところ、自律神経の働きが血流には大きく関わっていることを知り、調べていくと、皮膚への何かしらの優しい刺激で副交感神経が上がるということにたどり着いた。それをどのようにやるかを模索している際に、鉱物が発する遠赤外線と副交感神経の関係に着目した。プラチナはその当時すでにその特徴的な材料特性から医療や美容の分野で活用されており、さらには飲用するなど健康分野でも活用が見込まれていたため、興味を持った。

また、当時、話題を集めていたのがナノ素材だった。「これを繊維に応用できないか」と閃き、アイデアを抱えて大手素材商社や素材開発会社を行脚するも、前例がないだけに門前払い。約30軒も断られ「ダメか」と思いはじめたころ、東京で各種ナノ素材を開発する会社が「若くて(当時25歳)変な奴がきた」と面白がってくれ、共同研究がスタートする。

いくつかのナノ材料を組み合わせたサンプルで実際に使用した際の体感が強くあったため、本格的な研究を始めた。
研究開始から8カ月後、マウスを使った安全性試験を経て、ナノプラチナなどの鉱物を一定割合で配合すると、疲労回復にも関連する免疫細胞の賦活効果が得られることを発見。※1
そのバランスを変更しながら最も効果的な割合を導き出し、ナノ化した鉱物を一定配合した新特殊素材(鉱物)を完成させた。

※1:2010年に論文(IN VIVO)にて発表

繊維に出来るわけないと玉砕も、一閃の光。頑固職人の親父さん現る。

新発⾒の喜びもつかの間、完成した新素材(鉱物)を⽷に練り込んでくれる繊維⼯場が⾒つからない。「そんな固い物を混ぜて機械が壊れたらどうする。責任を持てるのか」「刃こぼれするにきまっている」などなど。
そんななか、ワラにもすがる想いで頭を下げた⼯場で頑固で変哲な親⽗さん(社⻑)との出会いが。「どこも断られたのか。ならオレがやるしかないな」と繊維開発を引き受けてくれた。
機械を改良するなど、多々の⼯夫を凝らし約4カ⽉かけて⽷に練り込むことに成功。2007年4⽉、ついに、鉱物を練り込んだ新繊維PHT(DPV576含有繊維)が完成する。

新素材でつくった床ずれ解消マット。結果は大惨敗「売れない」

そうして2007年5月、新開発した繊維を使い、床ずれに悩む方向けの医療系ベッドパット(マットレス)を商品化。第一号マットが物置部屋のような窓もない8畳ほどのオフィスに届いたとき、「すごいのができた。これで勝負だ!」と社員一同、武者震いする。
しかし、現実は甘くなかった。売れない。商品に自信はあるも、10万円という価格に誤算が生じた。営業の甲斐なく、マットは1枚も売れなかった。

3.背水の陣のケアウェア

余った繊維でつくった
介護士向けケアウェアが大ヒット

余った繊維でつくった介護士向けTシャツが思わぬところの目に留まる。

売れなくて「途⽅に暮れた」当時、余った繊維でTシャツを作った。介護で疲れる介護⼠の体をいたわる「ケアウェア」として、2008年2⽉に開催されたホテル&レストランショーの特別企画「SPA展」の⾝体を癒すコーナーに出展。万策尽きた最後のこのアイデアが、医療関係者でなく、期待もしなかった⼤⼿スポーツジムのバイヤーの⽬に留まった。「アスリートは疲労がたまり、⾝体はボロボロ。アスリートのためにジム内の売店で販売したい」と。その申し出に「介護⽤品しか考えていなかった。スポーツウェアは星の数ほどあるが、“休養”に焦点を当てた商品はない」ことにハッと気づく。

スポーツジムのトレーナーが絶賛、ひと月で数百万円を売るヒットに。

2009年1⽉、「ケアウェア」という商品名のまま、テスト販売を開始。「まだ、アスリート向けのウェアで勝負をかけるべきか迷っていた。なので、介護っぽい商品名をつけていた」と当時を振り返る。ところが、半信半疑ながら背⽔の陣で挑んだこの⼀歩が、⼤きな前進に。
商品を購入したジムのトレーナーが大絶賛。彼らから火がつき、その生徒へと波及、みんなの「すごくいい」の口コミが一気に拡大した。ジム側も店長会議で各店に販売を勧め、系列店など約40店舗で取り扱いが決定。ひと月で数百万円を売る爆発的ヒットとなった。

これに手ごたえを感じ、スポーツ分野への可能性を探るため、スポーツ科学研究の世界最先端を行くオーストラリアのA.I.Sを訪問。A.I.Sは豪州のみならず世界中のトップアスリートが集結し最先端の研究・トレーニングが実施されている国立機関。そこではもはや、効率的なトレーニングや栄養は当たり前で「いかに効率的に休息を取り、早く疲労から回復するか」に焦点を当てていることを知り、手ごたえが確信に変わる。

4.リカバリーウェア誕生

疲労のメカニズム研究から
生まれた休養時専用の
リカバリーウェア

累計190万着を突破、百貨店やスポーツ専⾨店など全国で販売。

2009年6月、かながわ産業振興センター新規成長産業事業化促進事業の対象にも採択され、同年8月から東海大学との産学公連携事業として、運動後の休養時専用に特化したウェア開発を開始。神奈川県に各種ビジネスマッチングなど事業サポートを受けながら、東海大学と協力し、科学的な検証研究を実施。「これまでは介護分野を想定して研究を行い、Tシャツのデザインも作ってきた。運動後の休養時ウェアとして販売するために、一からやり直した」と当時を振り返る。

人は免疫・神経・代謝の3つの要素のバランスに「崩れ」が出たときを疲労の状態といい、血流が良くなると栄養や酸素が運ばれ、老廃物や疲労物質を排出し易くなる。そうした疲労の原因となるストレスからの回復効果の研究成果(※2)を携えて2010年2月、"攻めの休養"を提案する休養時専用の「リカバリーウェア」が完成、商品の販売を開始した。

⽇本代表選⼿らスポーツ関係者に「疲労回復のための安眠をサポートする」と認められ、トップアスリートの⼝コミが拡散。2012年度は⽉に4000枚まで販売ペースを上げ、その後も販売数を着実に伸ばし、これまでに190万着(2024年10月初旬時点)を突破。百貨店やスポーツ専⾨店等で取り扱いのあるヒット商品に成⻑した。

※2:医学と生物学 第154巻 第2号 p86-91(2010)

アスリートからビジネスパーソン、主婦へ。利用者が広がり、直営店も拡大中

運動後の疲労回復サポートを⽬的に開発した商品だが、最近では⽇々の⽣活の疲労回復を助ける普段着(室内着)として着⽤されるなど、⽤途も広がりをみせている。 販売当初のアスリートに加え、多忙なビジネスパーソンや家事に追われる主婦、しっかり休息したい⽅、健康志向の⾼齢者などへと、愛⽤者のすそ野を広げた。⼥性利⽤者も5割と急速に増加した。
ビジネスパーソンや⼥性へと広がるきっかけとなったのが2014年9⽉に投⼊した、⾝体の特定部位(⾸、ふくらはぎ等)の疲労に着⽬した⼿頃な「アクセサリーシリーズ」。特に⼥性は肩や脚のケアに悩む⽅が多く、⽀持されている。

また、直営店展開として、2015年4月に当社初のショップインショップ(店舗内店舗)「ベネクスショップ」を、小田急百貨店 新宿店 ハルク2階にオープンさせる(2022年2月末に閉店)。
2017年3月には西日本に初進出、阪急うめだ本店8階のスポーツファッション売り場に関西1号店をオープンさせた(2023年2月14日に閉店)。さらに同月、新宿高島屋に、ファッションフロア初出店となる面積最大(25平米)の店舗をオープン。2017年11月にはドイツのマンハイム中心部にできた新しい商業施設内に、欧州1号店となる直営店(約200平米)を開業した。

世界最大のスポーツ用品市で日本初の最高賞を獲得、海外展開のきっかけに。

海外展開のきっかけは、ドイツで行われる世界最大のスポーツ用品の見本市「ISPO(イスポ)」の商品コンテストで「革命的なスポーツギア」と評され、日本企業として初めて最高賞「ゴールドウィナー」を獲得(2013年2月)したこと。
欧州での反応に手ごたえを感じ、販売代理店を探すべく翌2014年2月、実際に同展にブース出展。前年の最高賞受賞商品のため、展示会主催者側のパンフレット等で事前に大々的に紹介され、前評判は高く、展示会開催期間中に欧州の問屋やメーカーなど約20社から販売契約の打診交渉が。そうして欧州現地仕様の商品を新たに開発。2015年11月から、海外初進出となるドイツでの販売を開始した。

健康増進や未病関連のサービスと国内でも評価。

ISPOで評価されたことを機に、国内での評価も着々と増えていった。
そして、2018年には神奈川県が未病関連の商品やサービスを認定する「ME-BYO BRAND」の認定を受け、2019年に「健康医療アワード2019」を受賞する。

認可/認定・受賞歴について、詳しくはこちらをご覧ください。

認可/認定・受賞歴について

海外有名大学など、国内外19校と共同研究。

商品開発段階の東海大学工学部との共同研究後も、新素材や疲労のメカニズム研究を継続している。現在、疲労回復分野はスポーツ医学などの分野で注目を集めており、国内外の大学との共同研究も増え、現在19校(国内12校、海外7校※2023年6月末時点)と新たな科学的検証を行っている。
また、世界で最先端のナノ材料の研究を実施するCNSI(California NanoSystems Institute)や筑波大学などで運動選手の回復に関する実験を行っている。

[共同研究機関]
東海大学 / 埼玉大学 / 新潟大学 / 新潟医療福祉大学 / 神奈川県立保健福祉大学 / 順天堂大学 / 横浜国立大学 / 広島国際大学 / 東京医療保健大学 / 岐阜医療科学大学 / 日本体育大学 / 東京大学
CNSI(米:カリフォルニア ナノシステム研究所)
UCLA(米:カリフォルニア大学ロサンゼルス校)
UC Irvine(米:カリフォルニア大学アーバイン校)
Charles R. Drew Univerity of Medicine and Science(米:チャールズドゥルー医科大学)
Stanford University(米:スタンフォード大学)
Ruhr-Universität Bochum(独:ボーフム大学)
Alexandria University(エジプト:アレクサンドリア大学)

学会発表や研究論文について、詳しくはこちらをご覧ください。

研究開発について